ちょうどいい推理の難易度でした!たすかる。センター長が手を引いてくださる具合がほどよくて考え込むこともなくほどよいプレイ時間でした。一周をするのに9時間。
以下は本編すべてのネタバレを含みます。まだ発売したて!どうぞお気をつけて。

プレイして主題歌の差し込まれるタイミングに喜びましょう!!


▼色彩設計が素晴らしい

ジャブの感想から入りますか…。
色数制限のあるドット絵って世界観の統一が出ていいな~!!と初見から思っていました。都市伝説解体センターは補色の青~ライトで落ち着いたグレイにちかいトーンの黄色。
色の要素だけ抜き出すと公共やメンズ製品でよく使われる色合いになるところ、青の量で雰囲気を不穏にさせる(美桜ちゃんのお部屋の色合い)・彩度高めの差し色(特定の時の黄色・キャラクターを動かす際の赤色…)などで雰囲気づくりが丁寧の行われているところ、なおいいな~~!と思いました。
演出の面の意図として、高明彩度で描かれるSNSターンがより鮮烈にはいってくるのかもしれないとも感じます。パステル美少女のアイコンの人や、肌色のアイコンのなまなましさ・現実味をより感じますもんね。
虚構の中でのモブ人間性を引き立たせるため登場人物の方の色情報量を減らすの、すごいことですね…。

▼虚構の構図

6話、鮫島事件!!!ここの構造が1番好きでした。堂々クライマックス!!名前だけで中身の存在しない、語ることを止められる事件「鮫島事件」と名前とは違う、本来存在しないあざみちゃんとセンター長の都市伝説解体センターを重ねる構造が気持ちよくって……。
あったものをないものとするな/ないものをあるものとするぞ!だったのかな。X的な書き方になってしまうけれど。
終盤の展開について、私は綺麗に騙されました。
センター長=如月の身内だと素直に思っていて……。イラストもボリュームのあるボブカットだったし……。それどころか車椅子に乗っているというデザインは足が不自由という事象とは直結しないので、サイト管理人でもあるでしょう!!と……。踊れて楽しかったです。
悔しい。既存の叙述トリックに足を引っ張られていました。

▼解体

天の眼って人が見ていなくてもお天道様、神様(という明確なかたちのない何者か)は見ているぞ!とあらためて現実をつきつけなおす行為で良かったな〜と振り返って思います。
目に関わる能力を持つ2人がこれの担当なのもよかった。そして都市伝説の部分を解体したからといって、人の感情による行動などの部分は全然解決されていないところもよかった……。
というかもしかしてイルミティカードの鍵2つってセンター長とあざみちゃんの意味ですか?最終話において解錠を2回するという匂わせ……?

▼SNSの解像度と承認欲求

これはネタバレではない感想として評を見ていた点で、SNSの解像度、とても現代的。ユーザーネームのしょうもないダジャレに至るまで作り込まれており、現代日本世界観の地続きだと強く感じました。
正直SNSの悪意描写があんまり続くようなら、この作品やりきれないかもしれない……と思ったくらい。ジャスミンさんが見なくていいよ、とやさしく言ってくれなければ露悪的すぎて匙を投げていたかもしれません。集団の漠然とした悪意じゃなく不可解現象の解剖を求めてこの作品を始めたので!!!!

過去はついてまわるという表現の一環としてかもしれないけれど、5ソサエティの面々が多少なりとも過激なことを行ったり、他人を害する行為だとしても自分の利益・成功を求めることを止められない姿勢がグロテスクだと感じました。
金銭面としては正直話が進行している時点の彼らが稼いでいる額からしたらスズメの涙かもしれないけれど、100万人チャンネル登録がいて、自分たちの一挙一動に反応が帰ってくるという状況はたしかに頭がおかしくなってしまうよ……とも感じます。若さゆえの全能感に加えて、実際尻を拭いてくれるひともいるわけだし。行動力があること以外はフォローできない悪役たちだったな……。

ここにある警鐘はSNSやめろ!とかじゃなく自分の言葉を振り返っておこう……くらいのマイルドなものだったとわたしは感じます。
己だって間違った情報を拡散する存在にはなりうる。けれども解体センターチャンネル晩酌さんのように画面の向こうの誰かがポジティブな感情を抱く情報にもなりうる。
というかこれすらもわたしが「1人で酒飲みながら寝落ち動画するのに、センター長の語りってめちゃくちゃ適してそ〜〜!!!」と共感しているだけで、揚げ足とって殴ろうと思えばできる内容だし……。情報をあてもないインターネットに放流するのって怖すぎる行為のはずなのに、身近になりすぎてますよね。社会。


▼ジャスミンさん……。

この復讐劇に欠かせない人、止木さん。
警察の中である程度の権力があり、行動力がある、歩さんに踏み込めない別の世界にいる人。プレイヤーを騙す人であり、物語の中で騙される人であり……。
わたしにとっても良心でした。富入さんと、クローゼットの司書さんも好き。職務に真面目に取り組む人への好感。あと「死んだら化粧からは開放されたいよ」と笑っていたさまがすごく好きで……。カラッとした女、かわいい。
止木さんがいなかったら計画はもっと曖昧に無差別に乱暴に進められていた可能性すら感じる。歩さんはきっとそれができる人だから。


▼あざみちゃん……。

作り出された無垢で世間知らずなあざみちゃんのことを素直に愛していました、プレイヤーは……。人心掌握とキャラメイクがお上手なのである。
涙を流して震えながらも職務を全うしようとするがんばりやさん、物分りがよく、素直。どこにいれても恥ずかしくない新入社員さんでしょう。
事件解決のために、固定観念や知識なしの状態から純粋に過ちを糾弾するひとが必要だったこともほんとうにわかる。人の認識は簡単には変えられないから、1度疑わしいと思われた!というだけで警戒したり、悪感情を抱いたりするものだろうし。まっさらな立場(男女という視点の違いもある)からあらためて今の行為はおかしいよ、と言われて素直に改めることを少しは願っていたのかな、歩さん。期待していなかったからあんなおおごとにしたとも思う。


歩さんの中の安心するためのおまじないがあざみちゃんのひとりの世界に入るためのルーチンとして残っていること、自分とは全く違う存在は作り出せないということだと解釈しています。
だから歩さんの中にあざみちゃんの面もあるし、センター長の面もずっと存在するものだと信じて続編、やりませんか?ぜんぜん2人もしくは新しいXさんが黒幕で助かるので……。


▼以上を踏まえてエンディングの描写

休美さん!!
休美さんの大きな感情ではないですか!!
ぜんぜんカラッとしてないじゃないですか!!!!
誰を追っていったのか明確にはされないし、仕事の一環として出向くことになったのかもしれない。クローゼット行きになったとはいえ不明瞭なサイバーテロであるし。
でも終盤でちゃんと触れ合って、いちばん長い時間を共にしたジャスミンさんがあざみちゃん/センター長の存在を観測して「ある」と言うならば2人が実在しないということにはならないのでしょうか。だからやっぱりジャスミンさん主役で続編……やりませんか!?スピンオフでもいい、ブラックボックスになっているジャスミンさんの心の内を知りたい。

▼都市伝説の最新作って?

洒落怖にまとめられていた作品を読みふけったあの日、いまメディアでリブートされて語られる知名度があるものはあの頃から来ているなあとも感じます。あの頃を啜っていた人達が発信するクリエイター側になっている……。禍話の膨大な短編や、近畿地方の〜など、さまざまに怖い話は語られる昨今、今語られている話も5年後10年後、何かの作品になっていくのでしょうか。(近畿地方の〜は映画化が既に決まってますが)そもそも語り手が曖昧なネットロアが大量に氾濫しているというのも都市伝説・噂的だなあとも思います。未来はどうなるのかな。

このあたりのことが気になったので、近似タイトルっぽい「ネット怪談の民俗学」を購入しました。
わたし、これを読んだら2週目で会話パターン回収のためにあざみちゃんにぽやぽやのたぬきになってもらうんだ…。